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北面接道の奥行のある敷地
建物を北側に寄せて、南に庭をとる考え方もあります。現状、敷地の南側は駐車場となっており、採光の条件も良いです。しかし、周囲には敷地目いっぱいに建てられた倉庫も多く、南側の採光は将来的に約束されたものではありません。また、隣地は実家の敷地となっており、比較的大きな庭があります。そのため、本計画では採光条件による方位のみにとらわれず、周辺環境(特に実家との関係性)に配慮した配置計画としています。
開口部による外部との関係性
実家とのつながりを重視するとは言え、それぞれの家庭が程よい距離を保つ工夫が必要です。人間関係同様に建物の計画にも「付かず離れずの関係」が重要です。外部に対してオープンでいたいという気分の時には大きな窓の空間に、プライベートな時間を過ごしたいという時には開口部の少ない空間に移動することで外部に対する気分の開放率を調整することができます。大きな窓は内部からは解放感、外部からは圧迫感が面積の分だけ強くなります。その感覚を和らげるように、窓の大きさに応じて外壁の位置をずらし、窓を外壁から凹んだ位置に設けています。
鍾乳洞のような内部空間
室内は天井高さが変化するひとつながりの空間の連続になっています。鍾乳洞のように、天井高さの変化によって、壁や扉で仕切られていないけれども、なんとなく別の部屋のように感じられる内部空間です。1日の多くの時間を一緒に過ごす施主にとってお互いの気配を感じつつも、それぞれの時間を有意義に過ごせるように、鍾乳洞のような空間は「付かず離れずの関係」の維持に貢献します。